講義では、異文化リテラシーの重要性と、文化の違いを理解することと現代の多国籍企業の成功との関係について説明。特に、文化的要因が製品やサービスを現地の消費者の習慣や好みに適合させるためのマーケティング戦略の違いをどのように推進しているかを探る。
なぜ文化はグローバルビジネスにとって重要なのか?
国際的な経営者は、次のことを知っておく必要がある。
- 文化を活用したビジネスの推進(合併/買収/合弁/戦略的提携)
- 文化的衝突の可能性を認識する
- 文化的不安の症状を認識する
- 文化の違いに対処する戦略を採用する
※極端に言えばイスラム教国家に豚肉製品を売りこんでも売れないので、売り出す国家の文化的性格購買傾向、トレンド等を知っておくほうがよい。
文化の違いの理解が足りないと以下のことが問題となる。
- コミュニケーション/コントロール/調整
- 動機
- 革新
- マーケティング
- 人材マネジメント
そもそも文化とは何か?
文化とは、集団のメンバーが共有する信念と期待のパターン(傾向)である。これらの信念と期待は、集団内の個人やグループの行動を強力に形作る規範を生み出す。
A,人々がどのように問題を管理しているかに基づいて、社会を分類し、比較するシステムを開発するシステムを開発すればよいのではないか。
Hofstedeの価値次元に関する研究 (1980)
従業員意識調査データ
人数: N=116,000(母集団の人数)
対象:一つの多国籍企業 (IBM) の子会社
国:66カ国
期間:1967年~1973年
統計的データ分析と理論的推論に基づいて (国家) 文化を比較するために使用できる4つの中心的および独立した次元があることを明らかにした。
どの国にも4つの次元のそれぞれに得点(0から100)が与えられた。ホフステッドの文化指標はのちに2つ追加され以下の6つになった。
- 個人主義 (IDV) :個人の意思決定と行動が社会によって受け入れられ、奨励される程度。
- 権力距離 (PD) :組織/社会における権力が不平等に分配されていることを社会が受け入れる程度。上下関係が強いということ。
- 不確実性回避 (UAI) :社会が不確実性を受け入れ、対処する意思がある程度。
- 男性らしさ (MAS) :伝統的な男性優位の価値観が社会において重要である程度。
- 長期的展望 (LTO) :(マイケル・ボンド、1991年追加):すべての社会は、現在と未来の課題に取り組みながら、自らの過去とのつながりを維持しなければならない。社会がこの2つの実存的な目標にどのように優先順位をつけているか。(アリとキリギリス)
- 快楽的か禁欲的か:(マイケル・ミンコフ (Michael Minkov) 、2010年追加):快楽的とは、人生を楽しむことや楽しむことに関連した基本的で自然な人間の欲求を比較的自由に満足させることができる社会のことです。禁欲的とは、必要性の充足を抑制し、厳格な社会規範によって規制する社会のことである。
個人主義・集団主義
個人主義社会では、個人同士のつながりが緩やかである。人々は自分自身と家族の世話をすることを期待される(自分と親の面倒さえ見ればよい)。ビジネスの場合、採用と解雇に基づく雇用契約に反映される。
より集団的な社会では、人々は他人をより心配するようになり、文化はより結束の強い集団、例えば忠誠を誓うかぎり、保護を提供する家族集団に根ざしている。このような傾向は、企業だけでなく社会にも反映されている。(家族の規模が一族レベルで大きい)
権力距離
端的に言えば、上下化関係を容認している度合い。
国内の権限の弱い組織のメンバーが、権力が不平等に分配されることをどの程度期待し、受け入れるかに関係している。Hofstedeが 「低権力距離」 と呼んだものを実証した国の文化は、不平等を最小化する懸念がある文化である。
権力距離(権力格差)が大きい国では、力の弱い者ほど決定権を持つ者に目を向ける傾向があり、社会内の不平等はより容認されやすい。これは、権力の集中化と、企業内の弱者の従属化が進んでいることを示している。
不確実性回避
端的に言えばリスクをとるか堅実かということ。社会の構成員が不確実で未知の状況に脅威を感じている程度に関係している。
不確実性回避が低い国にとって、不確実性が低い、正確さや時間厳守はそれほど重要ではなく、革新は奨励され、人々はルールや規則よりも人を尊重する傾向にある。イギリスはこの傾向が強く、憲法も成文化されていない。
不確実性回避性が高いということは、曖昧な状況への恐れがあり、忙しく、正確で時間を守ることを好むことを意味する。
男らしさ/女性らしさ
男女の役割を区別するかということから転じて、男性的な社会は目標や成功重視、女性的なら生活の質や思いやりを重視している。
男女の役割分担が社会の中でどの程度明確になっているかを指す。女性らしさの高い社会では、社会的な性別の役割は重複しており、男性も女性も、謙遜、直観、生活の質といった 「女性的」 な特質を、伝統的な 「男性的」 な攻撃性や競争性よりも重視している。
各国の指標
日本は男性らしさ、不確実性回避、長期的展望が高い傾向がある。確かに日本人は女性の立場がいまだに弱い。また、投資や裁判を行う人が少ないことを不確実性回避傾向が反映しているといえるだろう。
アメリカは個人主義的な傾向が強いのも納得感がある。中国は権力に従順な傾向が強く見られるがアメリカやフィンランドはかなり権力に批判的だということがわかる。
ホフステッドの指標への批判
- 文化決定論に反するのではないか?(文化的決定論とは、私たちが育てられた文化が、私たちが誰であるかを感情的、行動的なレベルで後天的に決定するという信念である)
- 国家=文化という構図は本当にあっているのか??
- 各国平均回答数が少なく、1社のみを対象にしているということでサンプルが不十分ではないか。?
- 1967~1973年のデータということで少し古いのではないか?
- 文化は変化するのではないか?
文化の変化要因
- 外国直接投資
- 他文化への曝露、グローバル化等
- 経済情勢(経済発展はより個人主義的な行動につながるかもしれない)
- 教育
- 高等教育はしばしば異なる価値観を伴う(PD↓UAI↓)
- 制度変更
フレームワークの使用方法
企業文化、職業文化、地域文化、ジェンダー文化、世代文化の違いに注意する必要がある。
フレームワークは単なるツールであり、あまり厳密に使用するものではなく、役に立つ場合にのみ使用することを推奨する。もし、このフレームが合わない場合には複数のフレームワークを利用することができるので、それを利用してより良いアイデアを得る必要がある。
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