Uberの法的問題と海外判例:グローバルな先例からの洞察

ビジネス

この記事では、世界的に注目を集めているライドシェアプラットフォームであるUberが直面している法的な問題に焦点を当てます。さらに、国際的な判例を通じて得られる洞察についても探求していきます。Uberの成長と共に浮上してきた労働法、雇用関係、規制の課題は、そのビジネスモデルの持つ革新性とも相克するものです。私たちは、Uberを巡る法的紛争や海外の判例を通じて、このグローバルな議論に参加し、将来の展望を考察していきます。

Uberの仕組みと主なサービス内容

Uberは、スマートフォンやGPSなどの情報通信技術を活用し、移動ニーズのある利用者とドライバーをマッチングさせるサービスです。タクシー会社やハイヤー会社だけでなく、個人のドライバーとも提携しています。

Uberのサービスイメージ

移動の目的や人数に応じて、サービスを「uberX(エコカー)」「uberTAXI(タクシー)」「UberBLACK(ハイヤー)」 「UberSUV(ミニバン)」「UberLUX(最高級車)」などから選択することができます。たとえば、uberXは、エコカーを利用して個人で開業しているドライバーが多く、自家用車によるライドシェアリングが行われています。

Uberのビジネスモデルの特徴

基本的なUberの利用方法は、配車→乗車→評価!この三段階のみで利用できます!

1:配車→Uberのアプリを立ち上げ、GPS機能を使って自分の近くにある車両を指定する。行き先も指定する。

2:乗車→Uberアプリに表示されたナンバープレートや車の特徴、ドライバーを確認し、乗車します。すでに行き先は、ドライバーに伝わっているので、説明する必要がありません。

3:評価 →清算は、スマホで登録したクレジットカードに請求されます。ドライバーとの金銭授受はありません。

→自分が所有している車で稼働できるので初期投資をかけずに副業感覚で稼ぐことができるのです。

Uberの利便性

Uberの利便性には、ドライバーにとっては料金の支払いが基本的にクレジットカードで行われるため、現金払いの際に懸念される乗り逃げなどに遭うことがない点があります。利用者にとっても、ドライバー情報を確認できる(顔、名前、評価など)、利用中のトラブルをすぐに運営側へ報告できる、従来のタクシーに比べて利用料金が安いといったメリットがあります。

uberの問題点

Uberには問題点もあります。例えば、Uber社は一貫してドライバーを個人事業主と位置付けており、雇用関係がないと主張しています。また、旅客自動車運輸事業法に違反すると指摘される白タク行為や、既存事業者との対立などの問題もあります。海外では一般ドライバーがタクシー運転手の仕事を奪うことになる。

Dynamex事件とギグ・エコノミー規性法~アメリカ カルフォルニア州の例~

ギグ・エコノミーとは?

「ギグ・エコノミー(Gig Economy)」とは、インターネットを通じて単発の仕事を受注する働き方や、それによって成り立つ経済形態のことを指します。企業が個人事業主(フリーランスワーカー)に仕事を発注することが多く、フリーランスワーカーは自分の能力を活かしながら、柔軟に仕事を選んで受注することができます。

「ギグ」とは、ジャズなどのアーティストが行う、その場限りの単発ライブから由来しています。

ギグエコノミーとシェアリングエコノミーの違い

一方、「シェアリングエコノミー(Sharing Economy)」は、特定の「モノ」を複数人でシェアすることで、リソースを最大限に活用する経済形態のことを指します。例えば、カーシェアリングや民泊サービスが挙げられます。

ギグエコノミーとシェアリングエコノミーの違いは、ギグエコノミーが複数の企業が1人に仕事を依頼する「ヒト」のシェアであるのに対し、シェアリングエコノミーは特定の「モノ」を複数人でシェアすることです。ただし、シェアリングエコノミーはギグエコノミーの一側面であり、焦点の当て方によってはギグエコノミーもシェアリングエコノミーの一形態と見ることができます。

ダイナメックス事件の概要とカリフォルニア州最高裁判所の判決

ダイナメックス事件は、カリフォルニア州で発生した労働法違反に関する訴訟である。配送会社のダイナメックス社は、ドライバーを独立契約者として扱い、最低賃金や労働時間、休憩などの規定に違反していたとして、ドライバーらによる集団訴訟を受けました。被告側は、雇用者ではなく独立契約者であると主張し、過去の判例「Borelloテスト」を根拠に主張しました。一方、Martinez基準を用いるべきと対抗しました。しかし、最高裁判所は、雇用を「労働を認めること」と定義するMartinez基準を文字通り解釈すると、範囲が広すぎるため適切でないと判断しました。また、被告の主張するBorello基準は、業務従事者の分類を予め決定することが難しく、賃金・時間法における責任を回避する機会を使用者に与えかねないとして、雇用者の定義を拡張した「ABCテスト」という基準を示しました。この事件は、カリフォルニア州における労働法違反に関する判例として広く知られており、労働者の権利保護に大きな影響を与えました。

Borelloテストの10項目

  1. 使用者の業務従事者の作業に対する指揮命令権限の有無
  2. 使用者が業務従事者を辞めさせる権利を持っているか
  3. 業務従事者が特別な職業またはビジネスを有していたか
  4. 通常誰かの指揮命令の下で行うような業務かどうか
  5. どのようなスキルが必要とされるか
  6. 使用者が業務従事者に対して、道具や労働場所を提供したか
  7. サービスが提供された時間の長さがどれくらいか
  8. 業務従事者が時間または業務量によって支払いを受けたか
  9. その業務は通常の業務の一部だったか
  10. 雇用関係を構築していると両当事者が信じていたかどうか

ABCテスト

以下の3つの要件を雇用者が示さない限り、労働者は被雇用者であると推定される

  1. 労働者が、契約上も実際上も、雇用者の監督及び指揮下にないこと
  2. 労働者が、雇用者の通常の業務外の仕事を行なっていること→原告の宅配業務は、配送会社の通常の業務の範囲内
  3. 労働者が雇用者にために行なった労働について、労働者は、通例独立の取引、職業又は事業として行なっていること

判決とその影響

➢本件では、原告は雇用者と認められ、ダイナメックス社は賃 金及び労働時間等に関する規制に違反しているとした

➢運送業界に限らず、この判例はUberをはじめとする様々なシェアリングエコノミーの事業者に適用され、影響は大きい

➢過去の雇用関係に関わる訴訟にも言及して適用された

➢この判決は、カリフォルニア州議会法AB5として成文化

カリフォルニア州法AB5 (通称:ギグエコノミー法)

2019年9月公布、2020年1月より施行

法律の趣旨は、独立契約者と誤分類されることにより、奪われた労働者の権利の回復

※ABCテストがそのまま採用されたが、医師や弁護士、漁師、旅行代理店 の店員、工事トラック運転手などの24業界は除外

改正労働法2750条の3第a項へのあてはめ

a項(1) 報酬を得るために労働又は役務を提供する者は、以下の全ての要件を充たすことを証明しない限り、独立請負業者ではなく被雇用者であるとみなされる。

(A) その者が労務の遂行に関連して、労務遂行契約上もかつ実態において も、使用主体の管理(control)と指揮(direction)から自由であること。

→自由に労働時間を決められる一方で、料金や手数料はUber側が管理

(B) その者が、使用主体の事業の通常の過程以外の労務を遂行すること。

→ドライバーの業務は、Uberのビジネスの中核と考えられる

(C) その者が、遂行した労務と同じ性質の独立した職業、業務、事業に慣習的に従事していること。

→Uberのドライバーは被雇用者とみなされる

Uberの対応

Uberは、自社が提供するプラットフォームを通じてドライバーに仕事の機会を提供しているに過ぎず、ドライバーは自主的に起業し、アプリを利用して個人事業主として働いていると主張しています。

ただし、ギグエコノミー法による専門家の試算では、1人あたり3,625ドル(約40万円)の追加費用がかかり、Uberのコストは30%増加するとされています。このため、Uberは2019年10月にLyftなどとともにギグエコノミー法の変更を目指し、2020年11月に住民投票を行う提案を行い、3000万ドル(約32億円)の費用を拠出することを表明しました。

2020年1月には、カリフォルニア州で一部のライドシェアサービスについて、料金の前払い制を廃止し、ドライバーに対する報酬の透明性を高めることで、どの業務を請け負うかを選びやすくし、ABCテストのAの要件に適合させる狙いがありました。

Uberによるギグエコノミー法の差止請求

UberやPostmatesは、2019年12月にカリフォルニア州の憲法平等保護条項に違反しているとして、ギグエコノミー法の仮差し止めを求めました。この法律は、似たような仕事をする労働者を除外する規定が含まれており、これらの除外には理由がなく、定義が曖昧であるため、平等性を欠いていると主張しました。

しかし、2020年2月、カリフォルニア州の連邦地方裁判所は、「同法によって両社が経済的打撃を受けるものの、それは、賃金や雇用管理の正常さを支えるという州法が目指す公共の利益より重要ではない」としてこの差止請求を棄却しました。

カリフォルニア州の対応

カリフォルニア州司法長官らは、2020年5月5日にUberとLyftがギグエコノミー法に違反しているとして提訴しました。この訴訟により、UberやLyftは数億ドルにも上る民事制裁金やドライバーへの補償金を支払う可能性があります。Uberは裁判で争う姿勢を示しており、今後の展開が注目されます。

仏最高裁が初めて雇用関係を認めた判例

事件概要

2017年にUberによりアカウント凍結。アカウントを一方的に停止したのは不当解雇であるとして雇用関係の認定を求めて訴え提起。

流れ

労働審判所 「Uberとドライバーは雇用関係にない」

控訴院(高裁) 「Uberのドライバーは従業員である」

破棄院(仏最高裁判所) 控訴院判決を支持

Uber側の主張

ドライバーはプラットフォームへの接続の義務がなく、接続する際にも場所・時間については自由である。また、一時的な接続の停止は契約関係に影響を及ぼすものでない。連続での乗務の拒否は、アルゴリズムに基づくアカウントの停止につながるものの、配車要請に対する受け入れの可否は自由であるとして雇用契約はないと主張した。

破棄院の判決

  • 労働法L.8221-6条 登録がある=雇用関係があるとはいえない

⇨本人に関して永続的な法的従属関係に置かれる条件のもとでサービスを提供する場合は雇用関係が確立される。

  • また、プラットフォームへの接続の自由と労働時間の自由は従属関係に考慮されない
  • 個人事業主ではないという点に言及し、法的従属関係の有無から雇用関係を認めた

個人事業主である要件

自らの顧客関係を形成できること ⇨ドライバーは自分で顧客を選ぶことができない

料金の設定の自由 ⇨Uberの設定した運行ルートのとおり走行しないと会社が運賃を変更する

業務遂行条件を定める自由 ⇨ルートを自由に決める事ができない

以上3つの要件を満たさずに個人事業主ということはできない。

1996年のソシエテ・ジェネラル判決

  • 「労働契約」の有無の主たる判断基準は、労働の提供の有無、報酬の有無、特に「法的従属関係」の有無であるとした。
  • 「法的従属関係」の有無は、当該事案における客観的諸事情により判断される。その主たる判断基準は、使用者が労働者に対する指揮権限 (命令を出し、その実施を監督し、違反がある場合には処罰する権限)を有するかどうかである。

本件へのあてはめ

従属関係は、指揮命令を行う権限を有し、遂行を監督 し、従わなかった場合に懲戒なしうる使用者の影響力の下での労務の遂行によって特徴付けられる。

  • Uberが一方的にサービスの内容を決めている
  • アプリを停止されることがある

⇨従属関係肯定

今後

各々の補償や権利

労働組合に結集

⇨働く者の労働性が問われる

まとめ

  • カリフォルニアとフランスの2つの判例から示したよう に、Uberのドライバーは、Uberによる管理や指揮監督の下にあ り、雇用関係が認められる
  • 一方で、Uberはドライバーを従業員ではなく、個人事業主と して扱っている

Uberのドライバーも労働者としての適切な保護が必要である

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