【DAY24-25】ツェルマット&ベルン マッターホルンと4時間の下山記

旅行

10月10日

今回の旅程30日間の中で最も晴れてほしいと願った日がこの日である。ツェルマットまで行ってマッターホルンを見られずに帰るのでは何の目的も果たすことができず、ただ物価の高いスイスに寝泊まりするだけのむなしい1日になりかねない。弾丸日程でチャンスが1日しかないので余程運がよくないと厳しいことはわかっているが、そのために昨日ガレリアで闘牛のモザイク画で回りながらこの日の晴れを願ったのだから、晴れるはず。スイス編スタート。

費用

日付 項目・内容 金額(現地通貨) 日本円換算(概算)
10日 ミラノ → Visp(鉄道) 36.5€ ¥6,091
Visp → ツェルマット(登山鉄道) 38 CHF ¥6,765
ゴルナーグラート鉄道(片道) 52 CHF ¥9,269
ツェルマット宿泊税(City Tax) 4 CHF ¥713
宿泊費(ツェルマット) ¥7,128
11日 スイス国内一日乗車券 61 CHF ¥10,861
Basel → コルマール(鉄道) 16.9€ ¥2,824
宿泊費(コルマール)+都市税 25.7€(0.7€税含) ¥4,295
合計 ¥48,946

7:05 ミラノ中央→ツェルマット

まだ夜が明けきらないミラノの街を、大雨の中で駅へ急ぐ。晴れを願ったのに信じられないぐらい雨である。スイスへ向かう国際列車に乗り込むと、次第に天気が回復し、車窓から見える景色も山岳地帯へと変化していく。途中、国境越えのため2度のパスポートチェックを受ける。Visp駅での乗り換えでは、登山鉄道の待機時間が非常に長く、予定より大幅に遅れてツェルマットに到着。

車内で見つけた観光パンフレットによると、ゴルナーグラート鉄道のチケットがあれば、Vispからツェルマットへの交通費がかからないという情報が判明。すでに支払ってしまっていたため、かなりの損失を知って落ち込む。

11:00 ツェルマット到着

スイス・ヴァレー州に位置するツェルマットは、標高1,600mの高地にある山岳リゾート。ガソリン車の乗り入れが禁止されており、空気が澄んでいるのが印象的。街並みは木造のシャレーが並び、日本のスキー場の街にも似た親しみやすさがある。

この日は曇天で、街からはマッターホルンの姿は見えない。ヒートテックを着てきたがかなり寒い。ツェルマット唯一のホステルに荷物を預ける。物価の高いスイスらしく、他都市の倍近い宿泊費に驚く。

12:00 ゴルナーグラート鉄道(Gornergrat Bahn)

1898年開業の登山鉄道で、標高3,089mのゴルナーグラート展望台まで約33分で到達する。ヨーロッパ最高地点まで通じる電化鉄道として知られ、途中には氷河やマッターホルンの絶景が広がる。

今回はFindelbach駅から乗車。交通費節約のため最寄りの駅から一つ先の駅まで歩いてから乗車することにしたが、駅までの急坂が予想以上に厳しく、おとなしくツェルマット駅から乗ればよかったと後悔する。電車に乗るタイミングで雨が降り出す。車窓からは雲に隠れたマッターホルンの先端が一瞬だけ見える程度。

絶対に晴れてほしいと思っていたのだが、かなり絶望的。虹も出ていて、こちらは美しく印象に残った。

12:30 ゴルナーグラート展望台

ゴルナーグラート展望台は標高3,089mに位置し、マッターホルンをはじめとする4,000m級のアルプスの峰々を一望できるスイス屈指の絶景スポット。ツェルマットから登山鉄道で約30分、ヨーロッパ最高所のホテル「3100 Kulmhotel」も併設されている。晴天時には氷河と山々が織りなす壮大なパノラマが広がるが、天候に左右されやすい。

この日は気温1度、雪が積もり、足元は非常に滑りやすい。耐え切れず、カイロを開封し両ポケットに入れて寒さをしのぎながら、高山病に注意してゆっくり歩く。展望台はここから少し歩いて登ったところにある。

分厚い雲に覆われており、マッターホルンはほとんど見えない。時折雲が切れると歓声が上がるほどの悪天候。遠方には青空も見えるが、展望台周辺はガスが濃く、視界は限られていた。

それでも、しばらくすると少しずつ雲が晴れる割合が増え、展望台方面や氷河の側は少しずつ視界が開けてきた。眼下にはゴルナー氷河が広がり、氷河の流れと山々の稜線が織りなす風景は圧巻。

徒歩下山開始

展望台から徒歩で下山を開始。雪が積もっていて滑りやすく、慎重に進む。そんな中自転車で降りていく人もおり驚く。徐々に雪が消え、岩肌が露出した道へ。順路には印がつけられており、それに従って進む。

遠くにはリッフェル湖が見え始める。岩は滑りこそしないものの斜面が急で少し危ない。

14:30 リッフェル湖(Riffelsee)

標高2,757mに位置する氷河湖で、晴れた日には湖面にマッターホルンが映ることで有名。ここまでは徒歩で下山するという人も多い。

湖が近づくにつれて、マッターホルンにかかっていた雲がかなり晴れてきて、よく見えるようになってきた。湖面に映るマッターホルンが確認できる。非常に美しい。

ここから下りの電車に乗る人も多いと思うが、今回は交通費削減のために徒歩で降りる決断をする。しばらく歩いて無理そうなら、この先にも駅はあるので、いったんここは徒歩下山を選択。

静かな下山ルート

ここから先は上る人も下る人もほとんどいないため、誰とも出会うことなく歩いていく。急激な下りはなく、緩やかで歩きやすい。この辺から天気もかなり良くなり、歩き続けていることもあって大変暑くなってきた。ポケットのウルトラライトダウンは脱いでおく。

そしてついに、マッターホルンが完全に姿を現した。美しい三角形の山容が空に突き刺さるように浮かび上がる。視界には自分一人だけで、この景色を独り占めできていると思うと非常にうれしい。途中、小川が流れている場所もあるが、基本的には一本道でわかりやすい。マッターホルンが常に視界にあるので、意気揚々と歩が進む。

15:30 分岐点と急坂

少しずつ道が殺風景になり、正面にあったマッターホルンは向かって左側に来ている。印のついた岩があるので道が合っているのだと思いつつ歩みを進めると、看板を発見。駅に向かうか徒歩で最後まで行くかの選択のとき、余力を感じたのでツェルマットへの徒歩ルートを選ぶ。

ここから急激に道が険しくなる。岩の割合が多くなり、角度も急になってくる。滑って転ばないように注意が必要。膝への負担も大きくなる。また、これまでほとんどなかった木が生えているのもこのあたりから。

途中から水が流れ始めるゾーンに突入し、岩が滑って何度も転びかけた。まさに滝を下っているかのような感覚。ここで登ってくる2人組とすれ違う。降りるだけでも精いっぱいなのに、滝のようになっている斜面を登ってくるなんて猛者だなと思った。

紅葉と川沿いの道

このエリアを抜けると比較的なだらかになってきた。木も多くなり、黄色く紅葉しているのが美しい。突き当たって川に到達。しかし、思っていた場所ではない。しかも分かれ道でどちらに行っていいのかわからない。グーグルマップも山中ということで意味不明なルートを提示してきたことで頭が混乱した。少し不安になりかける。

ここでハイキングのグループを発見。話を聞いてみると彼らもツェルマットへ向かっているとのこと。歩いていた道は間違っていなかったみたいだ。彼らに道を聞きつつ、先導してもらい、ついていくことにした。川に沿って進む。途中で野生のシカを発見。かなり近くで出会えたのでうれしい。

16:30 フーリの吊り橋(Hängebrücke Furi)

ツェルマット近郊にあるこの吊り橋は、標高1,700m付近の森林地帯に架かる細長い橋で、谷をまたぐように設置されている。長さは約100m、高さは約90mあり、足元は金属のグリッドでできていて、下が透けて見える。高所恐怖症の人にはかなり厳しい構造だが、周囲の紅葉と谷の景色が素晴らしく、スイスらしい絶景スポットのひとつ。

ここからはツェルマットの街並みが見え始め、Googleマップも正確な位置情報を表示するようになってきた。吊り橋の近くにはゴンドラ乗り場もあり、ここから街へ戻ることもできるが、最後まで徒歩で歩くことに決める。周辺の村の風景を眺めながら、ゴールが近づく高揚感に包まれる。

17:10 ツェルマット帰還

ようやくツェルマットの街に戻ってきた。長い下山の末にたどり着いた安心感は大きく、先導してくれたハイキンググループには感謝しかない。街は晴れていて、マッターホルンがくっきりと見える。宿に戻ってチェックインを済ませ、少し休憩。

マッターホルン徒歩下山ルート解説

①3089mゴルナーグラート駅に到着後、3131mベストビューの展望台まで登る。

②15~15bの道を通りつつ21bリッフェル湖まで下る。(湖に映るマッターホルンを見たい方はここまで)

③21b~21と歩き、岐路で17を選択し下山。想定では線路に沿って歩き、18→14または18→20と歩く予定だったため、少しパニックに。17は非常に急なので注意が必要だろう。

④furiのゴンドラ乗り場から先も20に合流することなく、史跡の建物がある北側のルートで街まで戻る。

18:30 Zermatt Matterhorn Viewpoint(マッターホルン展望スポット)

ツェルマットの街並みとマッターホルンを一望できる撮影スポット。街の北側、少し高台に位置しており、階段を上ってアクセスする。地元では「Photopoint Zermatt」とも呼ばれ、SNS映えする構図が撮れることで人気。特に夕暮れ時から夜にかけては、山がシルエットになり、街の灯りとともに幻想的な写真が撮れる。

韓国人観光客が多いが日本の旅行サイトでは見当たらなかったのでやはり日本人は少ない。すでに混雑していた。夜景を撮影するために、暗くなる前から待機している人も多い。雲がかかってしまったが、19:30頃まで粘って撮影に成功。マッターホルンの輪郭と街の光が重なる瞬間は、旅の締めくくりにふさわしい光景だった。

10月11日

このホステルは旅の中で唯一、明確に「朝食付き」とされていた宿。スイスのチーズはやはり美味しく、パンやハム、ヨーグルトなども充実していて、たらふく頂く。

外に出るとこの日も快晴。街からマッターホルンがよく見える。昨日訪れたビュースポットにもう一度立ち寄りる。途中の道ではリスが走っていくのを見た。最後の一枚を撮ってから次の目的地へ。

この日はスイス国内鉄道の1日乗車券を購入していたため、時間の融通が利く。10時頃の電車でツェルマットを出発し、13:00にスイスの首都ベルンに到着。

13:00 ベルン

ベルンはスイスの首都でありながら、人口は約13万人とコンパクト。旧市街はアーレ川に囲まれた半島状の地形に広がり、ユネスコ世界遺産にも登録されている。石造りのアーケードが続く通りや、時計塔(Zytglogge)、連邦院(国会議事堂)、ベルン大聖堂などが点在し、歴史と政治の中心地としての顔を持つ。

ニーデック橋からの街並み

広い都市ではないので、観光スポットは1、2時間歩けば回り切れる。短時間立ち寄るという目的には最適の場所といえる。

この日はリュックを背負っての観光だったため、体力的にはかなりきつかったが、街は清潔感があり、歩いていて気持ちが良い。アインシュタインが一時期住んでいた家も見つけた。

ベルン大聖堂

大きい大聖堂だが、恒例の休憩スポットとして活用させてもらう。入場料がかからず、ベンチに座れるというのは大きな荷物を持ち運ぶ日には特にありがたい。

連邦院

14:00 クマ公園、バラ公園

ベルンの名物スポットのひとつが「クマ公園」。市の紋章にも描かれているクマが実際に飼育されており、広い敷地でのびのびと動き回る姿が見られる。この旅では2度目のクマとの遭遇。観光客も多く、人気のある場所。

すぐ近くのバラ公園は、丘の上にある展望スポット。季節的にバラの花は控えめだったが、ベルン旧市街を一望できる眺望は素晴らしく、ベンチに座って一息つくには最適な場所だった。ただし、坂を上ることになるのは大変。

引きで撮るとまばらなバラをいい感じに撮影

17:00 コルマール着

スイスのバーゼルで乗り換え、フランスのアルザス地方にあるコルマールへ。観光は翌日に回す予定だったが、まだ明るかったため、今日のうちに見られる場所は見ておくことにする。

総評

今回はコルマールへ向かうにあたり、「せっかくならスイスにも寄ってみたい」と考え、ミラノからのアクセスの良さを踏まえてツェルマットを目的地に選んだ。マッターホルンを一目見たいという思いが強く、調べている段階では「天気が悪くて何も見えなかった」という体験談が多かったため、1日しかチャンスがない自分にとってはかなり厳しい挑戦になるのではと覚悟していた。

しかし、結果的には非常に天候に恵まれ、最高の体験となった。ツェルマットの街並みは、日本のスキーリゾートを思い出させるような雰囲気で、スキーによく行く自分にとっては新鮮味こそなかったものの、今回の旅行中に訪れた他の都市とはまったく異なる空気感を持っていた。

登山鉄道でゴルナーグラート展望台へ向かった際は、天気が悪く、分厚い雲に覆われていた。雲の隙間からマッターホルンの先端が一瞬だけ見えたことに満足しかけていた。その後、嘘のように雲が晴れ、くっきりとしたマッターホルンの姿を拝むことができたのは、本当に運が良かったとしか言いようがない。

展望台から街までは、費用削減のため徒歩で下山することにした。所要時間は約4時間。かなりの時間がかかり、下り坂で膝への負担は大きかったが、街中でただの移動として1時間歩くのとは違い、ハイキングというアクティビティとしての歩行だったため、精神的にはそこまで辛くはなかった。結果として、電車で帰らずに歩いたことで、快晴のマッターホルンを山中から眺めることができたのは大きな収穫だった。ただし、下山後の膝へのダメージは覚悟しておいた方がいい。ちなみに、この道を上っていくことは個人的に考えたくない。山登り好きには中途半端な難易度だと思うし、節約したい人にとっても、さすがに時間と疲労を考えると割に合わないと個人的には思うからである。

治安に関しては非常に良好。寒すぎて外で寝られないためか、浮浪者の姿はまったく見かけなかった。何も気にすることなく、安心して過ごすことができた。

物価については、予想通りとにかく高い。山岳地帯であるためバス移動が難しく、基本的に電車移動を強いられる。そしてその電車が非常に高額。特にゴルナーグラート鉄道は、ツェルマットから往復で114フラン(約2万円)もかかる。徒歩で節約したくなる気持ちも理解できるのではないだろうか。それだけでなく、レストランも高く、ホステルですら他都市の倍近い価格設定。こうした事情から、スイス滞在はなるべく短時間で済ませ、早めにフランスへ抜けるという旅程になっていった。

ツェルマットでは、結果的に最高の経験ができた。季節によっては他にもさまざまなアクティビティや観光地があるが、今回は十分に満足できた。次回スイスを訪れる際は、もう少し予算に余裕があるときに、他の地域にも足を延ばしてみたい。

なお、ベルンについても触れておくと、世界遺産に登録されているだけあって、治安も良く、美しい首都だと感じた。ただ、街並みとしては「よくあるヨーロッパの都市」とも言える側面があり、旅の序盤であればもっと感動できたかもしれない。見どころは決して多いとは言えず、旅の目的地として据えるよりは、移動の途中で立ち寄るくらいがちょうど良い印象だった。

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