10月1日
プリトヴィツェの湖、ドブロブニクの城壁と海を経て、旅はいよいよイタリアへ。この日は空路でアドリア海を渡り、南イタリアの港町バーリへと向かう。目的は、世界遺産アルベロベッロの「トゥルッリ」と、バーリの街歩き。移動が多く、荷物も重く、体力的には厳しい一日だったが、南欧らしい陽気な空気と美食に救われた。
費用
項目 | 金額(€) | 日本円換算(概算) |
---|---|---|
ドブロブニク旧市街 → 空港(バス) | 10.00€ | ¥1,658 |
フライト(ドブロブニク → バーリ) | — | ¥7,201 |
バーリ空港 → バーリ中央駅(電車) | 5.30€ | ¥871 |
バーリ → アルベロベッロ(バス) | 5.00€ | ¥822 |
アルベロベッロ → バーリ(バス) | 5.00€ | ¥822 |
夕食(Osteria Travi Buco) | 28.00€ | ¥4,591 |
合計 | 53.30€ | ¥15,965 |
6:30 ドブロブニクバスステーション→空港
早朝の出発故にドミトリーにはスタッフがいないため、前夜に指定された場所へ鍵を返却して出発。旧市街から空港までは直通バスがあり、前日のうちにオンラインでチケットを購入しておいた。ロープウェイ乗り場もバス停になっているため、宿泊場所によってはそちらから乗るのも便利。
バスが旧市街を離れると、車窓から海と街並みが広がる。右側の席に座れば、最後までドブロブニクの景色を楽しめる。
8:00 フライト
思ったよりも大きな空港で驚く。国境を越えるにもかかわらず、パスポートコントロールはなし。背負っていたリュックは10kgもあり、事前に預け荷物として手配しておいた。預け荷物は座席と同じくらいの料金かかるのだが仕方がない。
搭乗は滑走路を歩いて機体へ。空から旧市街がくっきりと見え、最後の絶景を空中から味わう。
9:30 バーリ空港 → バーリ中央駅(電車)
機内で少し居眠りしている間にバーリ空港に到着。空港から中央駅までは電車で移動するが、タイミングが悪くかなり待たされる。距離は短いのに徐行運転で時間がかかり、少しストレスを感じる移動だった。
11:00 バーリ中央駅 → アルベロベッロ(バス)
バーリからアルベロベッロへはバスで約1時間半なのだが、バーリ中央駅からアルベロベッロ行きのバスが長蛇の列で、バスも遅延。いつ来るのかもわからないので他の人もイライラしている。日常的なことなのかバス会社の人が列を整備してくれるのは助かった。ようやくバスが1台来たが補助席を使っても全員は乗り切れず、自分も2台目にようやく乗れた。事前に調べた時にはあまりバスの本数がなさそうだったが、実態はそんなことはなさそう。
12:30〜13:30 アルベロベッロ観光
アルベロベッロは、南イタリア・プーリア州に位置する小さな村で、1996年にユネスコ世界遺産に登録された。最大の特徴は「トゥルッリ(Trulli)」と呼ばれる円錐形の石造りの家々。石灰岩を積み上げて作られた白い壁と灰色の屋根が連なる街並みは、まるで童話の世界に迷い込んだかのような幻想的な雰囲気を醸し出している。かつては農民の住居として使われていたが、現在では観光地として整備され、土産物屋やカフェ、博物館なども点在している。
Church of Saints Cosmas and Damiano(聖コスマとダミアノ教会)
町の中心に位置する教会で、アルベロベッロの守護聖人である聖コスマと聖ダミアノに捧げられている。白い石造りの外壁が印象的で、内部はシンプルながらも荘厳な雰囲気。地元の人々の信仰の場としても機能しており、観光客にも開かれている。
Trullo Sovrano(トゥルッロ・ソヴラーノ)
アルベロベッロで唯一の2階建てトゥルッリで、18世紀に建てられたもの。現在は博物館として公開されており、当時の家具や生活用品が展示されている。内部に入ると、トゥルッリ独特の構造や暮らしぶりを間近で体感できる。屋根の構造や石の積み方など、建築的な見どころも多い。
Trulli Panoramic View(トゥルッリ展望スポット)
アルベロベッロのトゥルッリ群を一望できる高台の展望スポット。白い壁と灰色の屋根が連なる風景は、まさに絶景。写真撮影には最適で、晴れた日には遠くの丘まで見渡せる。観光客が集まる人気の場所だが、時間帯によっては静かに景色を楽しめる。
Alberobello Painted Rooftops(ペイントされたトゥルッリの屋根)
一部のトゥルッリの屋根には、宗教的なシンボルや装飾的な絵が描かれている。十字架や星、ハートなどのモチーフが白くペイントされており、他のトゥルッリとは一線を画す個性的な外観。これらの屋根は、かつて住民の信仰や魔除けの意味を持っていたとされている。
Chiesa di Sant’Antonio da Padova(聖アントニオ教会)
トゥルッリ様式で建てられた珍しい教会で、円錐形の屋根を持つ宗教建築としては世界でも稀有な存在。外観はまるで巨大なトゥルッリそのもので、内部も独特の構造をしている。アルベロベッロのトゥルッリ文化が宗教建築にも影響を与えていることを示す貴重な例。
街自体がそれほど広くないため、ドブロブニク同様、街歩きだけではすぐにやることが尽きてしまう。バーリに戻れなくなると困るので、早めに駅へ向かうことにした。とはいえ、多少お金をかけて早くバーリに戻ったところで、特にやることがあるわけでもない。そこで、時間に余裕を持ちつつ、安価なバスのチケットを購入。
バス乗り場で待っていると、後方にどんどん人が並び始め、気づけばかなりの行列になっていた。面白かったのは、バスが到着した瞬間、列を無視して出入り口へと猛ダッシュする人が現れたこと。整備スタッフが「列を守るように」と注意していたが、それでも我先に乗り込もうとする姿が目立ち、こちらの人々は本当に並ばない文化なのだと実感した。
14:30〜15:30 バーリ街歩き
バーリ中央駅から旧市街方面へと歩きながら、夜行バス乗り場の位置を確認しておく。南イタリアということで治安面が少し心配だったが、実際に歩いてみると駅周辺こそやや雑然とした印象はあるものの、街の中心部に向かうにつれて整備された通りが続き、危険な雰囲気はまったく感じなかった。両脇にはショップやカフェが並び、テラス席では地元の人々がビールやカクテル片手に談笑している姿も見られた。観光客らしき人も多く、明るい時間帯であれば安心して歩ける街だと感じた。
この街歩きの中で、バーリの代表的な建築物をいくつか外観から眺めることができた。
- バーリ大聖堂(Cattedrale di San Sabino/カテドラーレ・ディ・サン・サビーノ) 12世紀に建てられたロマネスク様式の大聖堂。白い石造りの外観が印象的で、内部には地下聖堂もある。バーリ旧市街の宗教的中心地として知られている。
- サン・ニコラ聖堂(Basilica di San Nicola/バジリカ・ディ・サン・ニコラ) 聖ニコラウス(サンタクロースのモデル)の遺骨が安置されている巡礼地。東方正教会の信者にとっても重要な聖地で、宗教的な意味合いの強い教会。
- バーリ城(Castello Normanno-Svevo/カステッロ・ノルマンノ=スヴェーヴォ) 海沿いに建つ中世の要塞。ノルマン人とシュヴァーベン王朝によって築かれた歴史的建造物で、現在は展示施設としても利用されている。
- ペトゥルッツェッリ劇場(Teatro Petruzzelli/テアトロ・ペトゥルッツェッリ) バーリ最大の劇場で、オペラやクラシック音楽の公演が行われる。外観は優雅で、文化的な香りが漂う。
- マルゲリータ劇場(Teatro Margherita/テアトロ・マルゲリータ) 海沿いに建つ劇場で、現在は現代美術の展示などに使われている。水辺に浮かぶような構造が特徴的。
その後は海辺のベンチでしばらく黄昏れる。バーリではホテルを取っていなかったため、重いリュックを預けることもできず、肩や腰への負担が大きい。街歩きの途中から体力の消耗が激しくなり、ベンチで休む時間が自然と長くなっていった。海風が心地よく、夕暮れの空と港の静けさが疲れた身体に染み渡るようだった。
20:00 夕食 Osteria Travi Buco
バーリ旧市街にある地元の人気レストラン。イタリアでは夜の営業開始が遅く、19時に開けば早い方。時間前に到着しても入店はできず、店の準備が整っていても頑なに待たされる。
注文したのは、ムール貝とジャガイモのリゾット、エビとイカのグリル、チョコレートとイチジクのケーキ、ハウスワイン。どれも絶品で、これまでの旅の食事ランキングを一気に更新。海が近いだけあってシーフードの鮮度と味は格別。価格も驚くほどリーズナブル。
ウエイターは英語があまりわからないようで、少しぶっきらぼうだったが、日本でも田舎の定食屋に外国人が来たらこんな感じだろうなという思いもあり、特に気になるほどではなかった。
00:15 バーリ→ローマへ
食後は海辺のベンチでバスの時間まで待機。酔いも手伝って海風が心地よく、静かな夜の街をゆっくり味わう。24時間営業の店がほとんどないので、事前のシミュレーションでは少し心配だったが、ベンチで過ごしてもトラブルに巻き込まれることなく治安の悪さは最後まで感じることはなかった。
総評
この日の旅程は、ローマに1日早く向かう案やナポリに立ち寄る案など、いくつかの選択肢の中から、時間と費用のバランスを見て妥協して選んだものだった。結果としては、この選択は正解だったと言える。バーリの近くに、世界遺産にも登録されているアルベロベッロという魅力的な村があることは、旅程を組んだ段階では知らなかったため、なおさら満足度が高かった。
アルベロベッロは非常に人気のある観光地のようで、行きも帰りもバスが定刻通りに来ないのはややストレスだった。とはいえ、街並みは非常に特徴的で、他では絶対に見られないような景観が広がっている。円錐形の屋根を持つ「トゥルッリ」が並ぶ風景は、まるで童話の世界のようで、写真映えも抜群。ただし、基本的には街並みを眺めることが中心となるため、買い物や食事などをしないと、観光できる場所はあっという間に尽きてしまう。そういう意味では、日帰り観光には非常に適した場所だと感じた。
一方で、公共交通機関の時間が読みにくい点は難点。特にバスの遅延や混雑は、スケジュールを組む上での不安要素となる。バーリにはこれといった観光スポットが少ないことも、アルベロベッロに人が集中する理由のひとつかもしれない。とはいえ、バーリの街自体は中心部がきれいに整備されており、歩いていて不快な印象はなかった。路上駐車の車が多かったり、駅周辺が少し薄汚れていたりする面はあるが、南イタリアということで警戒していた治安面については、まったく問題を感じなかった。
何よりも印象に残ったのは、食事のクオリティ。これまで訪れた国々とは明らかに違い、イタリア料理の底力を感じる内容だった。ムール貝やイカのグリル、リゾット、デザートまでどれも絶品で、これから1週間以上続くイタリア滞在への期待を一気に高めてくれた。ハウスワインは0.5ℓで3€という破格の値段で、ついがぶがぶと飲んでしまい、久しぶりに酔っぱらうほどだった。
イタリアには魅力的な観光地が多く、そちらに時間を割くべきだと自分も思うので積極的にバーリを目的地にする必要まではないとは思うが、近くに寄った際には訪れても十分に楽しめる
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